こんにちは、左右公認会計士事務所のSです。
個人的・クラウド会計ソフトレビューの第2回です。実際に数か月会計記帳を進めてみてわかった、それぞれのクラウド会計ソフトの特徴を機能別に比較して紹介していければと思います。現在、数多くのクラウド会計ソフトがリリースされていますが、私が特に使う機会の多い、freeeとマネーフォワードの2種をメインで紹介させていただきます。
(※2024年8月末現在の状況。ご契約のバージョンによっては利用可能範囲等が異なる場合があります。また、私自身も使い方を勉強している最中です。より良い使い方や機能が見つかった場合は、後ほど追加でご紹介できればと思います。)
今回の機能比較は「口座連携からの取引・仕訳登録」です。
インターネットバンキングやクレジットカードとの自動連携で、自動で入出金明細を取り込めるというのは、クラウド会計を用いる大きな利点の一つです。ただし、取り込まれた明細を登録するまでの流れには、各ソフトで特徴があるように思います。
<freee>
freeeでは、連携した口座の明細は全て「自動で経理」というページに貯まっていきます。初めて連携した口座の明細は、AIが独自の判断に基づき科目を推測してくれます。ここで、提示された科目が適切であれば登録、間違っていれば手動で修正…でも良いのですが、freeeで連携後の明細をうまくさばいていくコツは「自動登録ルール」の設定にあります。
取引を登録する前に詳細画面を開き、正しい内容を設定した後、下部の「自動登録ルールとして設定」にチェックを入れた状態で取引登録をします。すると、明細の内容が合致していれば、次からは同じ取引をあらかじめ入れてくれるようになります。とはいえ、正直ここまでは後述のマネーフォワードでもほぼ同等の機能があります。
freeeがこの機能で優位な点はなんといっても「取引を登録」の選択肢があるところだと思います。特に効果を発揮するのが、振込手数料など、同じ内容が頻発するような明細を処理する場合です。例えば、明細の内容が「手数料」の場合は「支払手数料」の科目を選び「自動で登録」する、というルールを作っておくと、次回からは明細が連携された時点で、勝手に登録まで済ませてくれます。銀行振込による支払が多い場合、明細に手数料、手数料、手数料…と並びがちで、登録をクリックしていくだけでも意外と面倒なものです。freeeでは、自動登録ルールさえうまく作れば、この単純作業から解放されます。同じように、家賃や電気代等、定期で支払があるものも「取引を登録」ルールにしておくのもよいでしょう。そうすると、「自動で経理」のページには定期性のない収支だけが残るので、作業自体がぐっと少なくなります。(もちろん、取引の内容はしっかり確認してから登録したい場合は、「取引を推測」だけしておく設定もできます。)
逆に、一つの支払いで2つの科目が発生するような場合、(例:A社から、商品の「原材料(仕入)」と販管費の「消耗品」を購入している、など)freeeは「自動登録ルール」の設定が面倒です。というのも、先に「取引テンプレート」という機能で、原材料と消耗品に分けるテンプレートを予め作成しておき、それを「自動登録ルール」で取引に適用する、という2段階構成になるからです。私がよく直面するのは、個人事業主に報酬を払うような場合ですが、この場合も、実際の報酬支払額とは別に、源泉徴収税額を差し引く事が多いので、1つの取引で「支払報酬」と「預り金」等の2科目が発生します。まずは取引テンプレートを用意して、その後自動登録ルールを作って…と、登録までの道のりを迂回しなければならないので、複数科目を使った「自動登録ルール」も簡単に作成できるようなアップデートに期待したいところです。
<マネーフォワード>
連携口座の取引明細がメインの登録画面になります。機能はかなりシンプルで、取引が一覧でずらっと並ぶ形です。freeeのような目新しいデザインではなくシンプルで、会計に多少慣れた人にはこちらの方が見やすいかもしれません。入力可能箇所にテキストボックスが用意されているのは良いですが、例えば銀行口座の明細の取引日や摘要(どこから振り込まれた/どこに振り込んだ、の情報)など、あまり書き変える必要はないのではないか(むしろ変えない方が良いのでは?)という部分も編集が可能になっているので、作業時に迷ったり、うっかり書き変えてしまったりする要因になる気はします。とはいえ、必要な入力箇所さえわかってしまえば、一覧性の良さを生かしてサクサク作業を進められます。また、個人的にありがたいと思ったポイントを紹介すると、(画面を遷移したり更新したりしなければ)登録した取引が一時的に画面の下部に貯まっていく所です。うっかり内容を間違えてしまった!といった場合でも、即座に見直しや修正ができる点は正直とても便利です。また、口座連携画面、手入力など、どこから入力しても、全ての仕訳が同じように登録・集計されるので、仕訳登録後も管理・修正がしやすく、シンプルさがとても有利に働いているように思います。
また、マネーフォワードにも仕訳登録ルールを作って科目を推測させる機能がありますが、こちらは2行にわたる仕訳もルールとして登録できます。1行でも2行でも、もっと多い複数行仕訳でも、同じような手順でルール作りと管理ができるのは、freeeよりも使いやすく便利な点だと思います。
ただし、マネーフォワードは仕訳登録ルールを作った後の運用方法が少し厄介です。というのも、登録時の操作に気を付けないと、せっかく作ったルールが勝手に上書き更新されてしまう事があるのです。たとえば、A社という会社との取引について、普段は材料を仕入れているため、A社への支払いは「材料費」を推測するようにルールを作成していたとします。ところがある月だけたまたま消耗品を購入したため、推測された「材料費」を「消耗品費」に変更して登録をしました。すると、最初に作ったルールが、「消耗品費」を推測する、という内容に書き換えられてしまうのです。今月だけたまたま通常と異なる取引が発生した、という状況はそれなりにあると思うので、ルールの上書きはしないでほしいなぁ…というのが私個人としての正直な感想です。
また、先ほどfreeeの機能として紹介したような、仕訳登録まで済ませておいてくれる機能はありません。あくまで科目の推測をするルールしか設定ができないので、大量の振込手数料があっても、毎月同じ取引があっても、手動で登録をする必要があります。チェックボックスを用いて一括登録する機能はあるのですが、それでも1行1行チェックを入れる作業を延々とやっていると、手数料くらい自動で登録してくれたらなぁ…という気持ちになってきます。この辺りが今後のアップデートで実装・修正されれば、もっと使いやすくなるように思います。
いかがでしたでしょうか。今回は「口座連携からの取引・仕訳登録」の機能に絞って比較をしてみました。あくまで私個人の目線ですが、この機能についてはどちらかというとfreeeの方が使いやすい印象です。①単純取引は勝手に登録しておいてくれるという点、②一度作ったルールは意図的に変更しない限り変わらない点、の2つが主な理由です。単純取引が多い会社などは、freeeを使った方が記帳作業は楽になるのではないでしょうか。逆に、毎月取引先が変わる、取引数が多い、というような会社は、そもそも仕訳登録ルールをいちいち設定する必要がありませんし、一覧性のあるマネーフォワードの方が合っているかもしれません。
当事務所では、上記のようなクラウド会計ソフトの導入支援も行っております。弥生会計等のインストール型会計ソフトも含め、お客様の状況に合ったソフトのご提案もいたしますので、ご検討の際はぜひ一度ご相談ください。
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