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外国上場株式投資の利益に対する日本での課税と確定申告―海外証券口座・外国株配当・売却益の税務ガイド―

こんにちは、左右公認会計士事務所のNSです。
米国株、欧州株、ETFなどの外国上場株式への投資は、成長市場へのアクセスや分散投資の効果など、多くの魅力があります。しかし、海外株式の配当金や売却益に対しては、日本でも課税される点に注意が必要です。
特に、海外証券会社(IBKR、Charles Schwab、Firstrade など)を利用している場合、日本の源泉徴収が行われないため、確定申告が必須となるケースが多く、取扱いが複雑です。
本記事では、日本の税法上の「居住者」を前提に、外国株投資の税金のしくみ、証券口座ごとの源泉徴収の違い、確定申告が必要になるケース、税負担を軽減する方法などをまとめて解説します。

1. 外国株の利益に対する日本での課税(居住者が対象)

以下では、日本の所得税法上の「居住者」に該当する方を前提に説明します。

(1) 配当金(インカムゲイン)の課税
外国株式の配当金は「配当所得」に区分され、申告分離課税を選択した場合は次の税率が適用されます。
所得税・復興税 15.315%
住民税     5%
合計       20.315%
※総合課税・申告不要を選択できるケースもありますが、ここでは最も一般的な申告分離課税を前提に説明します。

(2) 売却益(キャピタルゲイン)の課税
外国株式の売却益は「上場株式等に係る譲渡所得」として扱われ、同じく20.315%(所得税15.315%+住民税5%)で課税されます。

2. 証券口座ごとの源泉徴収の仕組み

(1) 国内証券会社(特定口座〈源泉徴収あり〉)の場合
● 売却益
売却益に対して 20.315%の日本の税金が自動的に源泉徴収されます。

● 配当金
配当金には次の2段階で税金が課されます。
1. 外国の源泉徴収(例:米国株 = 10% ※条約適用時)
2. 日本で20.315%の源泉徴収
よって、配当金は日米いずれでも課税され、二重課税になります。

● 確定申告の要否
特定口座(源泉徴収あり)の場合、原則として確定申告は不要で完結します。ただし、以下のケースでは申告したほうが有利になることがあります。

① 損益通算・損失の繰越控除を使いたい場合
• 別口座での売却益と相殺
• 損失の 3 年繰越

② 外国税額控除を使いたい場合
外国株配当で海外源泉徴収された税額を、日本の所得税から控除できる場合があります。

(2) 海外証券口座の場合(IBKR、Schwabなど)
● 売却益
• 多くの国では、非居住者の株式売却益には源泉徴収がなく
• 海外証券口座でも日本の源泉徴収は行われません
➡ 売却益全額が口座に入金されます。

● 配当金
• 発行国で源泉徴収(例:米国株=条約適用で10%)
• 日本の税金は源泉徴収されない
➡ 日本での課税は確定申告で行う必要があります。

● 確定申告の要否
海外証券口座では日本の源泉徴収が行われないため、確定申告が必須 となります。

【比較表】国内証券会社 vs 海外証券口座

項目国内証券会社(特定口座・源泉徴収あり)海外証券口座
売却益の源泉徴収日本で20.315%が自動徴収発行国・日本とも徴収なし
配当金の源泉徴収発行国10%(米国)

+日本20.315%(二重課税)

発行国でのみ徴収、日本ではなし
確定申告原則不要(有利なケースあり)必須

3. 海外株投資で確定申告が必要/した方が有利なケース

(1) 確定申告が必要なケース
● 海外証券口座を利用している場合
• 日本の源泉徴収がないため、
配当・売却益とも確定申告が必須 です。

(2) 確定申告をしたほうが有利になるケース(国内証券含む)
① 外国税額控除を受けたい場合
• 海外で源泉徴収された税額の一部を日本の所得税から控除できる制度
• 多額の配当がある方はメリットあり
• 少額なら手間がメリットを上回らない可能性あり
※NISA口座の配当は、日本側が非課税のため外国税額控除の対象外です。

② 複数口座で損益通算したい場合
• 特定口座間、海外証券口座を含むすべての「上場株式等」で損益通算できます
• 損失が残れば最長3年間繰越可能

4. まとめ

外国株投資は日本株とは異なり、
• 海外での源泉徴収
• 日本の申告分離課税
• 外国税額控除
• 海外証券口座の確定申告義務
など、税務が複雑になりやすい分野です。
当事務所では、国内外の証券口座を利用されている方、海外株投資を積極的に行っている方の確定申告をサポートしております。税務上の取扱いに不安がある場合には、どうぞお気軽にご相談ください。

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