こんにちは、左右公認会計士事務所のNSです。
海外勤務による給与収入、外国株式や投資信託からの配当、海外不動産収入など、海外から所得を得ている方の中には、「海外で税金を払ったのに、日本でも課税されるの?」と疑問や不安を感じた方も多いのではないでしょうか。
日本の税法では、日本の「居住者」 と判定される場合、海外で得た所得も含めた全世界所得に対して日本で課税されます。このため、海外と日本の両方で同じ所得に税金が課される「二重課税」が生じるケースがあります。
こうした負担を軽減する制度が 外国税額控除 です。適切に利用することで、海外で負担した税額の一部または全部を日本の所得税から控除することができ、税負担を抑えることが可能です。
本記事では、外国税額控除の制度概要から計算方法、確定申告時の注意点まで、重要ポイントをわかりやすく解説します。
1.外国税額控除とは
日本の税法上の「居住者」が海外で所得を得た場合、その所得に対して次の両方で課税されることがあります。
現地国(日本以外の国)
日本(全世界所得課税)
この二重課税を調整するために設けられたのが 外国税額控除 です。控除の対象となるのは、給与、利子、配当、不動産収入などの国外源泉所得に対して海外で負担した所得税です。
*「非居住者」には外国税額控除は適用されません(そもそも日本で課税されないため)
*「住民税」にも同様の外国税額控除があります
2.控除限度額の計算方法
外国税額控除は、海外で支払った税金の「全額」が必ず控除されるわけではありません。
控除できる金額は次の式で上限が決まります。
控除限度額 = 日本の所得税額 × (国外所得 ÷ 全世界所得)
例えば、年間の日本国内所得が4,500万円、国外所得が500万円、日本での所得税額が1,500万円の場合、控除できる外国税額の上限は、
1,500万円 × (500万円 ÷ 5000万円) = 150万円
となります。
→ 海外でいくら税金を支払っていても、日本で控除できる上限は150万円までです。
*「全世界所得」や「国外所得」は調整後の課税所得ベースです
*上場株式の配当など「申告不要制度」を選択した場合、国外所得に含めない点に注意
3.確定申告時の手続き
〇必要書類の準備
次のような「海外で所得税を負担したことを証明する書類」が必要です。
・海外の源泉徴収票
・納税証明書
・証券会社の年間取引報告書(配当・利子など)
・不動産収入の納税証明等
〇確定申告書への記載
・「外国税額控除に関する明細書」を添付(所得の種類、国名、海外で支払った税額、繰越控除の有無等を記載)
4.控除超過額と控除余裕額の繰越
■ 控除超過額の繰越(海外税額が控除限度額を超えた場合)
海外で支払った税金 > 控除限度額
となった場合、超えた部分(控除超過額)は 翌年以後3年間に繰り越し可能 です。
適用には、控除超過額が生じた年の確定申告で「繰越控除適用」の申告及び翌年以降も確定申告を継続が必要です。
■ 控除余裕額の繰越(海外税額が控除限度額を下回った場合)
控除限度額 > 海外で支払った税金
の場合、その差額(控除余裕額)は翌年以後3年間、国外所得金額に加算 できます。
5.外国税額控除を利用する際の留意点
・控除上限がある
日本の所得税額を基準に計算されるため、海外で支払った税金の全額を必ず控除できるわけではありません。
・国別・所得区分別に計算が必要
所得税の外国税額控除は バスケット方式 を採用しており、国別、所得区分別(給与、配当、不動産、通常所得など)で計算する必要があります。
・書類の準備が必要
源泉徴収票、年間取引報告書、納税証明書などの書類を用意し、確定申告書に「外国税額控除に関する明細書」を添付する必要があります。
6.外国税額控除を利用できる主なパターン
次のような収入がある場合は、外国税額控除を適用できるかどうか検討してみてもよいかもしれません。
・外国での勤務による給与収入がある場合
・外国の株式や投資信託による配当を受けた場合
・外国の不動産の家賃収入がある場合
・外国預金や債券の利子を受け取った場合
等々
7.まとめ
外国税額控除を活用することで、海外で支払った税金の一部または全部を日本の所得税から控除し、二重課税の負担を軽減することができます。特に、外国勤務の給与や海外投資による配当や利子、不動産収入等がある場合は、控除の対象となるかを確認する価値があります。
当事務所では、外資系企業にお勤めの方や海外資産を所有する方の税務についてもサポートしております。外国税額控除の適用可否や計算方法、確定申告等の手続きについてご不明な点がある方は、ご相談ください。





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