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クラウド会計は「同期しただけ」では決算になりません ─確定申告ではまる人の共通点と、来年からの最短ルート─

確定申告の時期になると、毎年のように「今からお願いできますか」という駆け込み相談があります。資料が未整理というだけであれば、正直まだ何とかなります。最近、私たち会計事務所側として一番大変だと感じているのは、freee やマネーフォワード等のクラウド会計ソフトを契約し、銀行口座や多数のクレジットカードを「同期するだけ」にしているケースです。この状態だと、見た目上は「データが入っている」ように見えますし、試算表を見てもそれなりの数字が出来上がっているように見えます。しかし、適正な決算を行うという観点では、むしろ難易度が上がります。

1. 「同期しただけ」で起きる4つの破綻

次の4点がそろうと、作業量は一気に爆発します。
①銀行口座が多すぎる(複数口座それぞれで入出金や振替、同期漏れが発生し、通帳残高と会計残高を合わせる作業が極めて煩雑になる)、
②残高が合っていない(同期漏れ、二重計上、振替未整理などにより、口座残高と会計残高が一致しない)、
③事業経費と家事経費が混ざっている(プライベートの支出や社会保険料等が、事業用口座・事業用カードから落ちている)、
④クレジットカードが多すぎる(締日・引落日・明細の粒度がバラバラで、どの口座から何が落ちているのかを追跡するだけで相当な時間がかかる)。
実務上、一番問題が大きいのは「銀行口座が多すぎること」「クレジットカードが多すぎること」です。口座やカードが増えるほど、残高を合わせるために確認すべき対象が指数関数的に増え、同期のズレや未処理取引が必ず発生します。クラウド会計は「入力を楽にする道具」ですが、お金の流れが複雑なまま同期すると、その複雑さをそのまま会計に持ち込み、結果として決算・申告をより難しくしてしまいます。

2. その年は「何とかする」しかない

正直に言うと、すでに1年分が混乱している場合、特にインボイス制度が始まった現在においては、会計事務所側が「きれいな決算」と納得できる水準まで持っていくのは難しいことも少なくありません。現実には期限がある以上、どこかで「落としどころ」を作る必要があります。もっとも、ここでも一番時間を取られるのは、やはり残高合わせです。
来年以降のためにも、最低限以下の点は押さえておきたいところです。①銀行口座の期首残高から期末残高を確定させる(通帳・ネットバンクで数字を確認)、②クレジットカード未払金の残高を確定させる(クレジットカード明細等をベースに)、③家事と考えられる支出は一度事業主貸に寄せる、④売上の根拠を先に固める(入金履歴・請求書等。経費より売上漏れの方が問題は大きい)。これらはクラウド会計ソフトの中だけでは完結しません。通帳・カード明細・請求書等を横断的に見て、整合を取る必要があります。

3. 本当に一番効くのは「来年からのお金の流れの設計」

ここからが本題です。確定申告をラクにする最大のポイントは、会計ソフトの操作ではなく、お金の流れをシンプルにすることです。理想と現実はありますが、できるだけ理想に近づけることが重要です。おすすめは次の形です。①銀行口座はできれば1つ、せいぜい2〜3つまで、②クレジットカードはできれば1枚、せいぜい2〜3枚まで、③その口座・カードは事業用の収入および支出のみに限定する、④家事用は別口座・別カードに完全に分ける、⑤同期するのは事業用口座・カードのみとし、家事用や混在しているものは同期しない、⑥同期していない口座・カード・現金払いの事業経費は、別途Excel等で管理する(家事按分が必要なものもここに含める)。
クラウド会計上でできることには限界があります。同期は便利ですが、そもそも混ざっているものは、同期しても混ざったままです。

4. まとめ:クラウド会計の正解は「同期」ではなく「分離」

クラウド会計の導入自体は、とても良いことです。ただし、成功の条件があります。会計をラクにするのはアプリではなく、「お金の流れの分離」です。私自身も、クレジットカードの不正利用があった際に、すべての引き落とし設定を変更したことがあります。確かに面倒ではありますが、明細を見ながら数時間集中すれば終わります。銀行口座の整理も同じです。
「のど元過ぎたら熱さを忘れる」と言いますが、忘れる前に、ぜひできるだけ早く行動してみてください。それだけで、来年からの確定申告のストレスは別物になります。

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