Loading

法人化のタイミングは「所得いくら」だけで決めてよいのか ―税金・社会保険・維持コストを踏まえた現実的な考え方―

よくある質問:「所得がいくらになったら法人化すべきか」

個人事業主の方からよく受ける質問の一つに、「所得がいくらくらいになったら法人化した方がいいですか」というものがあります。インターネットや書籍を見ると、「課税所得が〇〇万円を超えたら法人化した方が得」といった目安がよく紹介されています。確かに、税金だけを見れば、そのようなラインが存在するのは事実です。ただし、本当にそれだけで法人化の判断をしてよいのでしょうか。これが、この記事を書こうと思った理由です。

税金だけを見ると「法人の方が有利」に見える理由

税金の観点から見ると、個人事業主の場合、所得が増えるにつれて所得税・住民税の累進税率が高くなります。一方、法人の場合は法人税等の税率は一定で、一定の所得水準を超えると、税率差だけを見れば法人の方が有利に見える局面が出てきます。そのため、「この金額を超えたら法人化」という話が出てきます。しかし、これは税金だけを切り取った議論です。

見落とされがちな社会保険料の影響

実務上、法人化を考える際に必ずセットで考えなければならないのが社会保険料です。法人になると、原則として役員報酬に対して社会保険への加入が必要になります。個人事業主の場合は国民健康保険・国民年金ですが、法人になると健康保険・厚生年金となり、保険料負担は一般的に大きくなります。しかも、社会保険料は「会社と個人で折半」とはいえ、実質的には全体で見ればコストです。税金が多少下がったとしても、社会保険料の増加によって、手取りベースではむしろ減るケースもあります。結果として、法人化を検討すべき所得水準のバーは、税金だけを考えた場合よりも大きく上がります。

法人には「固定でかかる維持コスト」がある

さらに、法人には維持コストがかかります。法人住民税の均等割、税務申告の手間や税理士報酬、登記や社会保険等各種手続きのコストなど、一定の固定費が発生します。これも、法人化の判断において無視できない要素です。税金が多少有利になったとしても、これらの維持コストを差し引いた結果、本当に意味があるのかは慎重に見極める必要があります。

それでも法人化に意味があるケース

では、法人化は「得にならない選択」なのでしょうか。決してそうではありません。長期間にわたって事業を続けるつもりであれば、法人化には税金やコスト以外の明確なメリットがあります。例えば、取引先や金融機関からの信用、事業と個人の切り分けの明確化、事業承継や人材採用のしやすさ、将来的なスケールを見据えた設計などです。これらは、短期的な税負担の比較だけでは測れない価値です。

個人事業主のまま続ける合理性

一方で、税金やコストの観点だけを考えるのであれば、無理に法人化せず、個人事業主のまま続けるという選択も十分に合理的だと考えています。特に、事業規模が安定しており、将来的な拡大を強く志向していない場合や、フリーランス的な働き方を想定している場合には、個人事業主であることのシンプルさは大きなメリットです。

まとめ:法人化は「将来像」から逆算して考える

結局のところ、法人化のタイミングは「所得がいくらか」だけで決めるものではありません。税金、社会保険料、維持コスト、そして何より、その事業をどのくらいの期間、どのような形で続けたいのかという視点を踏まえて判断する必要があります。「いくら超えたら法人化」という単純な基準に当てはめるのではなく、自分の事業の将来像から逆算して考えてみることを私たちはおすすめしています。

関連記事

  1. 生成AIアプリのOCR機能は「実務」で本当に使えるのか?~実際に…
  2. 親会社などへ支払う配当金の源泉徴収が2023年10月から不要にな…
  3. 外国税額控除で二重課税の負担を軽減|海外での所得がある日本居住者…
  4. 資本政策
  5. クラウドソフトで給与計算・年末調整! ~マネーフォワード編~
  6. QuickBooksと日本法人における活用の実情
  7. 【freee活用】決算サポート&外貨建取引管理アプリを使ってみた…
  8. freeeへ税理士・会計士(アドバイザー)を招待する方法

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP