この記事はこんな方向けです
• 確定申告を終えたばかりの個人事業主・フリーランスの方
• 「思ったより税金が高かった」と感じている方
• 来期の節税策を早めに検討したい方
• 経理体制を見直して、来年の確定申告を楽にしたい方
確定申告お疲れさまでした。
「やっと終わった! 税金のことは来年まで忘れたい」──そう思っていませんか? お気持ちはよくわかります。
でも実は、確定申告の直後こそ、来年の節税と経理を見直すベストタイミングなのです。
なぜなら、申告の記憶が新しい今なら「ここをもっとこうすればよかった」という改善点がすぐに見つかるからです。そして、節税策の多くは年末に慌てて始めても間に合いません。
この記事では、確定申告後に確認しておくべき5つのポイントをご紹介します。各ポイントに「実務の現場から」のコラムもつけていますので、ぜひ参考にしてください。
① 納税額の振り返り──「思ったより高かった」を放置しない
まず、今回の確定申告で実際にいくら税金を払ったか、トータルで把握しましょう。
個人事業主が支払う税金は、所得税だけではありません。住民税、個人事業税、そして課税事業者の方は消費税もあります。すべてを合計して「今年のトータル税負担」を確認してみてください。
「思ったより高かった」場合の原因分析
「思ったより高かった」と感じた場合は、原因を分析しましょう。主な要因は次の3つに分類できます。
| 要因 | 具体例 | 対策の方向性 |
| 売上増による自然増 | 事業が順調に成長し、課税所得が増えた | 節税策(共済・iDeCo等)の活用で税率のコントロール |
| 経費計上の不足 | 計上できる経費を入れ忘れていた | 経費の棚卸し、更正の請求の検討 |
| 控除の活用不足 | 小規模企業共済やiDeCoに未加入 | 使える所得控除を早めに検討・加入 |
また、来年の概算納税額を今のうちにざっくり計算しておくと、資金繰りに困ることがなくなります。今年と同程度の売上を想定し、所得税・住民税・事業税・消費税の合計額を見積もっておきましょう。
実務の現場から
「所得税だけ見て安心していたら、6月に届いた住民税の通知書を見てびっくりしたというをいただくことがあります。所得税は申告時に払いますが、住民税は6月以降の後払いです。事業税も8月と11月に分けて届きます。年間の税負担をトータルで把握しておかないと、資金繰りの見通しが立ちません。
② 予定納税の確認──6月・11月の資金準備を忘れずに
「確定申告で税金を払ったばかりなのに、6月にまた請求が来るの?」──予定納税の存在を知らずに驚かれる方が、毎年いらっしゃいます。
予定納税の仕組み
予定納税とは、前年の所得税が15万円以上だった場合に、今年の所得税の一部を前払いする制度です。
| 時期 | 内容 | 金額 |
| 第1期(7月) | 予定納税の納付 | 前年の所得税額の3分の1 |
| 第2期(11月) | 予定納税の納付 | 前年の所得税額の3分の1 |
| 確定申告時(翌年3月) | 精算(差額の納付or還付) | 年間の所得税額 − 予定納税額 |
ポイントは、この予定納税は「前年の実績」をもとに計算されるということです。今年の売上が前年より大幅に減っている場合は、「予定納税の減額申請」を行うことで、前払いの負担を軽くすることができます。減額申請の期限は第1期分が7月15日、第2期分が11月15日です。
予定納税を払い忘れるとどうなる?
予定納税を期限までに納付しないと、延滞税が加算されます。6月に届く通知書を見たら、すぐに納付日と金額をカレンダーに記録しておきましょう。振替納税を登録していれば自動引落としになるため、振替納税の登録をするのが一番のおすすめです。
実務の現場から
「前年は特別に大きな売上があっただけなのに、今年も同額の予定納税を求められている」というケースがよくあります。こうした場合は減額申請を検討してください。ただし、申請には今年の見込み所得を計算する必要があるため、早めに準備を始めることをおすすめします。
③ 経費の見落としチェック──入れ忘れた経費を洗い出す
確定申告で経費に入れ忘れているものはありませんか? 申告の記憶が新しい今のうちに、よくある見落としをチェックしてみましょう。
見落としがちな経費の代表例
| 経費の種類 | 具体例 | 按分のポイント |
| 家賃(自宅兼事務所) | 月額家賃のうち事業使用分 | 面積比または使用時間で按分 |
| 通信費 | 携帯電話代、インターネット回線費 | 事業使用割合で按分(例:70%事業使用なら70%を経費) |
| 書籍・サブスクリプション | 仕事関連の書籍、有料ツール、オンラインサービス | 事業関連であれば全額計上可 |
| 車両費・交通費 | ガソリン代、駐車場代、電車賃、タクシー代 | 事業目的の移動分を按分 |
| 交際費 | 取引先との会食、お歳暮・手土産代 | 事業目的であれば経費計上可 |
| 減価償却費 | PC、カメラ、オフィス家具(10万円以上) | 耐用年数に応じて毎年計上 |
経費にできるかどうかの判断基準は、シンプルに「事業に関係するかどうか」です。プライベートと兼用のものは、事業使用分だけを合理的に按分して計上します。
入れ忘れた経費は「更正の請求」で取り戻せる
もし経費を入れ忘れていた場合は、「更正の請求」という手続きで修正することができます。法定申告期限から5年以内であれば申請可能です。大きな金額の見落としがあれば、更正の請求を検討する価値は十分あります。
実務の現場から
「按分の割合をどう決めればいいかわからなかったから、結局入れなかった」というお声をよく聞きます。按分は「合理的に説明できる根拠があること」が大切です。たとえば自宅家賃なら、仕事部屋の面積÷自宅の総面積で算出するのが一般的です。不安な方はお気軽にご相談ください。
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お問い合わせはこちら →④ 来期の節税策を今から準備する──年末では間に合わない
節税策の多くは「年末に駆け込みで始めても間に合わない」ものです。確定申告が終わった今こそ、来期に向けた準備を始めるベストタイミングです。
代表的な節税策を、それぞれのメリットと注意点を含めてご紹介します。
小規模企業共済──個人事業主の「退職金」制度
掛金が全額所得控除になる、個人事業主のための退職金制度です。月額1,000円〜7万円の範囲で設定でき、年間最大84万円を所得から控除できます。途中加入でも、加入月から年末までの掛金が控除対象になります。
小規模企業共済のポイント
• 掛金は全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除
• 受取時は「退職所得」として優遇税制の対象(一括受取の場合)
• 事業資金が必要になった場合、掛金の範囲内で貸付制度も利用可能
• 加入手続きは、中小機構のWebサイトまたは金融機関の窓口で可能
iDeCo(個人型確定拠出年金)──老後資金を作りながら節税
こちらも掛金が全額所得控除になります。個人事業主の場合、月額最大68,000円(国民年金基金と合算)まで拠出可能です。
ただし、口座開設から運用開始まで1〜2ヶ月かかるため、早めに手続きを始めることをおすすめします。また、原則60歳まで引き出せない点は事前に理解しておきましょう。
経営セーフティ共済(倒産防止共済)──所得の平準化に有効
中小機構が運営する制度で、取引先の倒産に備えるための共済ですが、節税手段としても非常に優れています。
| 項目 | 内容 |
| 掛金 | 月額5,000円〜20万円(5,000円単位で設定可) |
| 税務上の扱い | 全額を必要経費(個人事業主)または損金(法人)に算入 |
| 積立上限 | 掛金総額800万円まで |
| 解約手当金 | 40ヶ月以上納付で掛金の100%が返戻 |
経営セーフティ共済の注意点
解約手当金は収入(事業所得)として課税されます。つまり、経費に入れた分が解約時に戻ってくるため、課税の先送り(繰延べ)という性質があります。利益が大きい年に加入して掛金を経費にし、利益が少ない年に解約するなど、所得の平準化に活用するのが効果的です。
また、2024年10月の制度改正により、解約後2年間は再加入しても掛金を経費にできなくなりました。解約のタイミングは慎重に検討してください。
青色申告への切り替え──白色申告の方はぜひ検討を
まだ白色申告の方は、来年から青色申告に切り替えることを検討してください。最大65万円の青色申告特別控除が受けられるほか、赤字の3年間繰越しなど、大きなメリットがあります。
切り替えの届出は、適用したい年の3月15日までに提出する必要があります。忘れないよう早めに提出しておくことをおすすめします。
ふるさと納税の計画的な活用
ふるさと納税は年間を通じていつでもできますが、控除上限額は所得によって変わります。今回の確定申告の所得をもとに、今年の上限額の目安を把握しておくと、計画的に活用できます。早めの把握がおすすめです。
ふるさと納税の詳しい仕組みは、「ふるさと納税について」もあわせてご覧ください。
主な節税策の比較まとめ
| 制度 | 年間の最大控除額 | 控除の種類 | 注意点 |
| 小規模企業共済 | 84万円 | 所得控除 | 廃業・65歳以上で受取可。貸付制度あり |
| iDeCo | 81.6万円 | 所得控除 | 原則60歳まで引出不可。開設に時間要 |
| 経営セーフティ共済 | 240万円 | 必要経費 | 解約時に課税。再加入制限あり(2年間) |
| 青色申告特別控除 | 65万円 | 所得控除 | 複式簿記+e-Tax申告が条件 |
| ふるさと納税 | 所得により変動 | 税額控除 | 自己負担2,000円。上限超過分は控除されない |
実務の現場から
iDeCoは手続きに時間がかかるため、年の前半に動くのが鉄則です。小規模企業共済も同様に、加入月からの掛金しか控除されません。「今から準備する」ことで、控除額を最大化できます。
⑤ 記帳・経理体制の見直し──来年の確定申告を楽にする
最後に、今回の確定申告を振り返って、経理体制を見直しましょう。
「レシートの整理が大変だった」「確定申告の直前に一気に作業した」「口座連携がうまく機能していなかった」──こうした悩みがあった方は、経理のやり方を改善するチャンスです。
年度の変わり目はクラウド会計導入のベストタイミング
クラウド会計ソフトの導入を検討するなら、年度の切り替わりの今がちょうどいいタイミングです。銀行口座やクレジットカードとの自動連携を設定しておけば、来年の記帳作業が格段に楽になります。
クラウド会計ソフトの選び方については、「クラウド会計レビューシリーズ①〜④」で詳しく解説しています。また、「クラウド会計は同期しただけでは決算になりません」も、導入前にぜひ読んでいただきたい記事です。
振替納税の登録
まだ登録していない方は、振替納税の手続きもおすすめです。口座振替にしておけば、納付のし忘れを防げますし、振替日が申告期限より少し遅いため資金繰りにも余裕が生まれます。一度登録すれば翌年以降も継続されます。
「自分で限界」と感じたら
「自分でやるのが限界だ」と感じたら、税理士への依頼を検討するタイミングかもしれません。日々の記帳から確定申告まで、プロに任せることで本業に集中できるようになります。
「全部任せたい」だけでなく、「記帳は自分でやるから、チェックと申告だけお願いしたい」という部分的なご依頼も可能です。
実務の現場から
「去年の確定申告で苦労した経験を活かして、今年こそは毎月記帳しよう」と思っても、4月・5月の繁忙期を過ぎるとまた溜まり始める──というパターンを何度も見てきました。仕組みで解決するのが一番です。クラウド会計の自動連携を設定し、月に1回半日だけでも確認する時間をスケジュールに入れておく。それだけで、来年の確定申告は驚くほど楽になります。
これから法人化を考えている方は、「創業1年目にやるべき経理の段取り──届出・口座・会計ソフト・月次ルーティンまで徹底解説」もぜひご覧ください。法人設立後の経理の全体像を時系列で整理しています。
まとめ──確定申告の直後が、来期を変えるベストタイミング
確定申告後に確認しておくべき5つのポイントをご紹介しました。
1. 納税額をトータルで振り返り、原因を分析する(所得税だけでなく住民税・事業税・消費税も)
2. 予定納税の有無と金額を確認し、資金を準備する(減額申請も検討)
3. 経費の見落としがないかチェックする(更正の請求で取り戻せる可能性も)
4. 来期の節税策を早めに検討・加入する(年末では間に合わない制度が多い)
5. 記帳・経理体制を見直し、来年に備える(仕組みで解決する)
確定申告の直後は、来期の経理と節税を見直すベストタイミングです。少しの準備が、来年の大きな差になります。
よくあるご質問
Q. 確定申告で経費を入れ忘れたことに気づきました。修正はできますか?
はい、「更正の請求」という手続きで修正できます。法定申告期限から5年以内であれば申請可能です。税務署に更正の請求書を提出し、認められれば、払いすぎた税金が還付されます。金額が大きい場合は、手続きの手間をかける価値はあります。
Q. 予定納税は拒否できますか?
予定納税は法律で定められた制度のため、拒否することはできません。ただし、今年の所得が前年より減少する見込みの場合は「予定納税の減額申請」を行うことで、前払い額を減らすことができます。第1期分の申請期限は7月15日です。
Q. 小規模企業共済とiDeCo、両方に加入できますか?
はい、併用可能です。小規模企業共済(年間最大84万円)とiDeCo(個人事業主は年間最大81.6万円)を合わせると、年間165.6万円の所得控除が可能です。さらに経営セーフティ共済(年間最大240万円を経費計上)も併用できます。ただし、手元資金とのバランスを考慮して、無理のない範囲で加入することが大切です。
Q. そろそろ法人化も考えています。個人事業主のうちにやっておくべきことはありますか?
法人化を検討されている場合は、まず個人事業としての経理体制をきちんと整えておくことが大切です。法人になると経理はさらに複雑になるため、個人事業の段階で記帳の習慣やクラウド会計の活用に慣れておくとスムーズです。法人化の判断基準については、当事務所のブログ「法人化のタイミングは『所得いくら』だけで決めてよいのか」「法人化したほうがいい人・しなくていい人」で詳しく解説しています。
税金や経理体制についてのご相談を承っています
「もう少し何かできるのでは」「経理のやり方を改善したい」
──そう感じたら、お気軽にお問い合わせください。


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