こんにちは、左右公認会計士事務所のKSです。
事業をされている皆さんなら、日々の領収書や請求書、通帳の記帳といった紙の書類をデジタルデータにする作業が、どれほど時間と手間がかかるか、身に染みて感じていらっしゃるのではないでしょうか。私たちも、お客様からお預かりする資料と日々格闘しています。
そんな中で、最近注目されているのが、AI(人工知能)を搭載したOCR(光学的文字認識)機能です。たくさんの事業者が「業務が劇的に楽になるのでは?」と、大きな期待を寄せています。
でも、本当に「正確に読み取れるの?」「ウチの会社の実務で使えるレベルなの?」正直なところ、そういった疑問を持つ方も多いですよね。
現在では多くの会計ソフトで活用されているものの、一ヶ月で枚数制限があったり、1枚○○円の料金制度になったりしているケースが多く、なかなか実用に踏み出せない方もいらっしゃると思います。
そこで今回は、会計ソフトではなく生成AIアプリのOCR機能に着目し、その使用感をお伝えしたいと思います。
1. そもそも「AI-OCR」って、何?
紙の書類に書かれた文字や数字を、AIがまるで人間のように認識して、デジタルデータに変換してくれる技術です。例えば、皆さんのスマホで領収書をパシャッと撮ったり、スキャナーで読み込んだりするだけで、日付、金額、店名といった情報が自動的にデータとして抽出される、というイメージです。
これまでのOCR技術では、読み取り間違いも非常に多くて、結局ほとんどを手作業で修正することに…。しかし、AIの進歩によって以前より高い精度で読み取れるようになったと言われています。
2. 実際に使ってみた!
さて、ここからが本題です。実務で、特に「これはAI-OCRが使えたら助かるなぁ」と思うシーンが主に2つあります。
・領収書や請求書の読み取り
・通帳や振込明細のデータ化
これらのシーンで使う資料を、話題の生成AIアプリで読み取ってみることにします。今回は、Googleの生成AIアプリ「Gemini 2.5 Flash」を使ってみました。
1.領収書や請求書を読み取り
レシートから手書きの請求書まで、色々な種類の請求書を合計30件用意して、日付・税込合計金額・摘要(支払先や商品名など)・適格請求書発行事業者番号を読み取らせてみました。

結果は…27件は記載内容をしっかり正確に読み取れていました!

特に手書きの請求書も、私が思っていた以上にきちんと認識してくれました。
読み取りミスがあった3件の内容はこんな感じです。
1件: 保存状態が悪く、文字が薄くなっていたレシートは残念ながら読み取れませんでした
1件: 支払先の名前(漢字)が間違っていました。「恵」と「惠」といった人間が目を凝らして判断するレベルの文字だと間違いが起きやすそうです。
1件: 振替予定日を、ちょっと離れて書いてあった「請求書発行日」と間違えて読み取ってしまっていました。レイアウトによっては、まだ判断が難しいようです。
2.通帳をデータ化してみた結果
次に、預金通帳の取引100件を選び、日付・入金額・出金額・取引相手を読み取らせてみました。

結果は…89件は記載内容を正しく読み込めていました!
通帳は行に線引きがされていない、文字が詰まっている等で誤読が非常に多いイメージだったのですが、ここまで読み取れているとは思っていませんでした。
読み取りミスがあった11件の内容はこうでした。
7件: 摘要欄の認識ミスが多かったです。「ワ」と「ク」、「パ」と「バ」など、似たようなカナ文字の読み間違いがありました。ここは資料のフォントによっても左右されてしまいそうですね。
3件: 入金額と出金額を逆で読み間違えていたケースがありました。このケースは注意が必要です。
1件: 取引そのものを読み込めていませんでした。完全に抜け落ちてしまうケースもあるようです。
3. AI-OCRを試した正直な所感
実際に生成AIのOCRを試してみて、私自身の正直な気持ちとしては、「すごい!ここまでできるのか!」という驚きと、「でも、まだ全面的に任せるのは難しいな」という判断が入り混じっています。
約9割もの取引を正確に読み込めていて、特に手書きの請求書もしっかり読み取れていたのには、AIの進化を肌で感じました。これだけの精度があれば、利用する価値は十分にあると感じます。
しかしながら、今回の結果を見ても分かる通り、完全に業務をAIに任せられるような「完璧な結果」ではありませんでした。現時点では、人間の目で内容を精査する作業が不可欠になります。
結論として、生成AIアプリのOCRについては「完全に自動化できるものではないけれど、業務を補助するツールとしては十分に機能する」というのが所感です。生成AIアプリのOCRを試してみる価値は、間違いなくあると思います。
私たちも、業務効率化に役立つAIツールの情報は、今後も発信していきたいと思います。
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