こんにちは、左右公認会計士事務所のSです。
インボイス制度により、経理実務では、消費税の税率や税額の確認に加えて、適格請求書(インボイス)に対応しているかどうか、というポイントが加わるようになりました。仕訳を登録する際や作業後のチェックを行う際には、これらを意識して正しく会計ソフトに入力していく必要があります。
今回は、freee、マネーフォワードの他、デスクトップ版ソフトの弥生会計も含めて、それぞれインボイス適格or非適格の入力方法の比較と、正しく入力するために使える補助・管理機能を一部ご紹介します。
<弥生会計>
仕訳入力時のインボイス対応/非対応の選択は、専用の入力欄が設けられており、①適格or経過措置と②控除率の2つを、それぞれプルダウンで設定するスタイルになっています。現時点では、経過措置の控除割合は80%ですが、数年後には50%、0%と段階的に割合が下がっていくことが予定されているため、既にそこを見据えた対応です。


プルダウン選択だと、区分記載の控除率の選択を間違えてしまいそうですが、期間に対応していない控除率を選択するとアラートが出るようになっています(※環境設定による)。とはいえ、期間によって明確に何%の控除がとれる、というのが決まっている以上、分ける必要があるのは変更になる前後の月だけでしょうし、常に選択肢に出しておく必要はない気がします。日付に応じて自動設定してくれる機能があった方が、手間も間違いもなくていいなあと思ってしまいます。

また、取引先のインボイス番号を管理する機能等は用意されていません。会計ソフトにインボイス番号を記載することは必須ではないので、これで必要十分という判断なのだと思います。
請求書まで遡ることなく確認できるようにしておきたいという場合には、主要な取引先のインボイス番号については別途、仕入・販売管理のソフトを使ったり、Excel等を用いたりして管理する、というのが現実的な路線のように思います。弥生会計のユーザーは、大企業は想定されていないと思うので、そこまですることはあまりないかもしれませんが。
全体として、弥生会計では、従来の入力スタイルをベースに、最低限のインボイス対応機能が追加されたという形で、操作自体は従来通りシンプルなので、弥生会計を使い慣れている人からすると、大幅な仕様変更がされなかったのは良い点だったのかもしれません。
<freee>
freeeの場合は、入力画面によって操作方法が少し異なります。まず「自動で経理」などの取引登録画面では、まず税率を選択し、そのうえで対象となる取引が適格インボイスに基づくものであれば「適格」のチェックを入れ、逆に非該当の場合は、チェックを外して登録します。「適格」のチェックの有無で、税区分が「課対仕入」と「課対仕入(控80)」で切り替わるようになっています。

一方、振替伝票などの仕訳入力画面では、適格や経過措置の区分ごとに税率がそれぞれ用意されており、その中から該当するものを選ぶという運用になります。画面によって入力方法が変わるため、最初のうちは少し戸惑うかもしれません。

freeeでは、インボイス番号の管理を内部で行うことができるようになっています。方法としては、取引先タグの登録時にインボイス番号を紐づけておく形で、仕訳入力時にその取引先タグを選ぶことで、登録済の情報を自動的に反映させることが可能です。インボイス番号が本当に存在しているかどうか、登録時や登録後の一覧から国税庁の公表サイトに照会する機能もあるため、日常的に複数の取引先とやりとりがあるようなケースでも、確認作業の手間が軽減されます。経費の支払先の小売店等、細かいものまで登録する必要はないと思いますが、主要な仕入先に対しては、これらの機能を利用すると管理やチェックが楽になりそうです。


<マネーフォワード>
マネーフォワードも基本的な仕組みはfreeeとよく似ていますが、操作面ではより一貫性があります。どの入力画面でも、対象の取引が適格インボイスに該当する場合は「適格」にチェックを入れる、そうでない場合はチェックを外す、というシンプルなルールが共通しており、画面によって操作方法が変わることはありません。(過去にも様々な機能で会計ソフトの比較をやっていますが、マネーフォワードの「どの画面でも大きくUIが変わらない」という点は、個人的には割と評価しています。)仕訳登録前だと経過措置の控除率が表示されないので、そこは少し気になりますが、登録後は取引日に応じて「●%控除」という表示がつくようになります。

また、マネーフォワードでも、取引先の登録時にインボイス番号を設定することができ、国税庁の公表サイトとの照会機能もあります。仕訳入力時に取引先を設定することで、登録した情報を反映させる仕組みについてもあり、このあたりもfreeeと機能的な差はありません。

なお、インボイスとの直接の関連事項ではないですが、マネーフォワードでは取引先を登録する際、取引先名の検索ができます。法人番号公表サイトと連動している為、個人事業主等は検索できませんが、法人であればここから情報を引っ張ってきてすぐに登録できるのがとても便利だと思いました。

こうして比較してみると、インボイス対応に関しては、freeeとマネーフォワードはいずれも一定の自動化・管理機能が備わっており、実務上でも十分に活用できる水準にあると感じました。弥生会計はインボイス制度に対する基本的な要素こそ押さえているものの、設定方法やインボイス番号の管理という範囲まで広げてみると、ユーザーが手動で対応しなければならない部分が多く、会計ソフト単体としての利便性という点では、他のクラウド型ソフトに軍配が挙がるかな、という印象でした。ただ、仕訳をどんどん入れていくという作業をする場合のスピードで比較すると、恐らく弥生会計が一番スムーズに動くソフトではあるので、作業全体の効率として考えると、弥生会計の方が使いやすいというパターンもあると思います。
いかがでしたでしょうか。それぞれの会計ソフトが持つ利点や利用対象の規模感にもよるとは思いますが、インボイス制度のように「一つ一つの処理の正確性」が求められる内容においては、細かい機能やフォロー体制の違いが実務における負担感を左右することもあります。そのため、自社の業務フローや入力体制に合ったソフトを選ぶことが、結果的にミスの少ない経理体制につながるのではないかと思います。
当事務所では、デスクトップ型・クラウド型いずれの会計ソフトについても、導入・活用の支援を行っております。お客様の状況に合ったソフトのご提案もいたしますので、ぜひ一度ご相談ください。
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