こんにちは。左右公認会計士事務所です。
今回は、クラウド会計ソフト QuickBooks(クイックブックス)について、日本法人における利用状況や注意点をご紹介します。特に、外資系企業の日本子会社をサポートする上でよく話題になるテーマです。
1.QuickBooksとは
QuickBooksは、米国Intuit社が提供する世界的に有名なクラウド会計ソフトです。中小企業やスタートアップを中心に北米をはじめ世界中で広く利用されており、請求書発行、経費管理、銀行口座との連携、レポート作成といった機能が充実しています。
グローバルにビジネスを展開する企業にとっては「英語で統一された会計ソフト」という点が大きな魅力です。
2.Intuitは日本市場から撤退済み
ただし、QuickBooksを提供するIntuit社はすでに日本市場から撤退しており、日本法人向けのサービスは終了しています。そのため、製品自体は英語仕様のまま、日本の税制や制度への対応はありません。
3.日本の消費税に非対応
QuickBooksを日本で使う際の最大の課題は、日本の消費税制度に対応していない点です。
たとえば、
– 軽減税率8%やインボイス制度(適格請求書)の処理
– 消費税申告書作成に必要な帳票フォーマットへの出力
– 消費税額の自動計算
といった機能が搭載されていません。したがって、日本法人がQuickBooks単体で会計・税務を完結させるのは現実的に難しいといえます。
4.外資系企業の日本法人で利用されるケース
それでも、外資系企業の日本法人ではQuickBooksが使われることがあります。理由は、グループ全体での統一とガバナンスです。
たとえば、
– 米国本社でQuickBooksを利用しているため、日本法人も同じシステムを導入
– グローバルでの月次・四半期レポーティングをQuickBooksに統一
– 海外の経理チームが日本法人のデータを直接確認できるようにする
といったニーズから、あえて日本法人にもQuickBooksを導入する場合があります。
この場合、日本側の実務はどうなるかというと――
– 日本の会計ソフト(マネーフォワード、freee、弥生会計など)で消費税や法人税の申告を対応
– QuickBooksは「グローバル用レポート作成」のために並行入力
という「二刀流」での運用になるケースが多いです。
5.実務上の注意点
二刀流運用にはいくつかの課題があります。
– 同じ取引を日本会計ソフトとQuickBooksに二重入力する必要がある
– 勘定科目の体系をすり合わせる必要がある
– 本社向けレポートと日本基準の差異については調整する必要がある
そのため、現場担当者だけでは負担が大きく、外部の会計事務所によるサポートが求められることが少なくありません。
6.左右公認会計士事務所での対応
当事務所では、QuickBooksを利用する外資系企業日本法人のサポートを数多く行っています。具体的には、
– 日本会計基準に基づく記帳・消費税申告
– QuickBooksへの並行入力・データチェック
– 本社報告用レポートの作成(英語対応可)
– 勘定科目のマッピングや調整仕訳の提案
といった形で、日本の税務とグローバル報告の両立をお手伝いしています。
<よくある質問(FAQ)>
・Q1. QuickBooksだけで日本法人の会計・税務は完結できますか?
残念ながらできません。QuickBooksは日本の消費税制度に対応していないため、日本法人がかなり小規模の場合は力わざで対応することも可能ですが、ある程度の規模になった場合に対応できません。
・Q2. QuickBooksと日本会計ソフトを二重入力するのは大変ではありませんか?
確かに工数は増えます。グローバルでの管理のしやすさと工数の増加のどちらを取るかという判断になります。
・Q3. QuickBooksを使うメリットは何ですか?
海外経理チームがリアルタイムで確認でき、グローバルで統一されたレポート作成が可能、英語表記が標準なので海外本社とのやり取りがスムーズ、といったメリットがあります。日本法人主導ではなく、親会社の意向により入力するのが一般的です。
・Q4. 日本法人でQuickBooksを利用する場合、どんなサポートを受けられますか?
QuickBooksへの代行入力、日本基準での税務申告対応、本社向け英語レポーティングの作成、税務調査対応まで幅広くサポート可能です。
・Q5. QuickBooks以外の海外会計ソフトにも対応していますか?
はい。XeroやNetSuiteなど他の海外クラウド会計ソフトも対応可能です。
<実際の事例紹介(ケーススタディ)>
事例① 欧米系ソフトウェア企業の日本子会社
海外本社がQuickBooksを導入し、連結レポーティング業務を統一化するにあたり、日本法人でもQuickbooksへの入力を海外本社から求められた。
– 課題: 日本の消費税計算にQuickBooksが対応していない。
– 対応: 日本法人では弥生会計を併用し、消費税申告や決算処理を行いつつ、QuickBooksには月次レポート用に並行入力。
– 当事務所の役割: 弥生会計の入力、QuickBooksにも並行して入力して、本社報告。
結果: 日本法人の財務情報がスムーズに米国本社に連携され、税務申告も遅延なく完了。
事例② アジア系スタートアップの日本進出
本社ではすでにQuickBooksを導入しており、日本法人も同じシステムを利用。
– 課題: 日本法人のスタッフは英語に不慣れでQuickBooksの操作に戸惑いがち。
– 対応: 日本の会計ソフトへの入力は会社担当者、当事務所が代理でQuickBooks入力を代行。
– 当事務所の役割: 本社向けにはQuickBooksデータの入力、報告を実施。
結果: スタッフの業務に大きな影響は与えず、本社の要求にも対応可能となった。
まとめ
QuickBooksはグローバルでの標準化に強みがある一方、日本法人での利用には「日本の税制に対応した仕組み」が欠かせません。左右公認会計士事務所では、QuickBooksを含む海外会計ソフトを利用する外資系日本法人様へポートと行っています。外資系企業の日本進出や日本法人でのQuickBooks運用にお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
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