この記事はこんな方向けです
• 法人を設立したばかりで、経理の全体像をつかみたい方
• これから法人設立を予定しており、段取りを事前に把握しておきたい方
• 経理を後回しにしてしまい、巻き返したい方
目次
1. 設立直後に済ませる届出関係(設立〜2ヶ月以内)
2. 法人口座の開設とお金の流れの整理
3. 会計ソフトの選定と初期設定──創業期に合ったソフトの選び方
4. 月次の経理ルーティンを作る──「溜めない仕組み」が鍵
5. 決算・税務申告のスケジュールを把握する
6. よくあるご質問
「会社を作ったけれど、経理は何から手をつければいいのか?」
創業したばかりの経営者から、こうしたご相談をよくいただきます。
実際、創業期に経理を後回しにしてしまうと、さまざまな問題が起きます。記帳が溜まって決算時に大混乱する。税務署への届出が期限切れになり、青色申告のメリットを受けられない。融資の審査に必要な資料がそろわず、タイミングを逃してしまう──。
これらは創業期の「あるある」ですが、最初にしっかり段取りを組んでおけば、すべて防ぐことができます。逆にいえば、1年目の経理の仕組みづくりが、その後の経営の土台になるのです。
この記事では、法人設立後の1年目にやるべき経理の段取りを、時系列で5つのステップに整理してお伝えします。各ステップで「実務でよくある失敗」もご紹介していますので、同じ轍を踏まないための参考にしてください。
① 設立直後に済ませる届出関係(設立〜2ヶ月以内)
法人を設立したら、まず各種届出を済ませましょう。届出の多くには提出期限があり、特に「青色申告の承認申請書」は期限を過ぎると1期目から青色申告ができなくなります。
以下に、主な届出を一覧で整理しました。
| 届出先 | 届出書類 | 提出期限 |
| 税務署 | 法人設立届出書 | 設立から2ヶ月以内 |
| 税務署 | 青色申告の承認申請書 | 設立から3ヶ月以内 or 事業年度終了日のいずれか早い方 |
| 税務署 | 給与支払事務所の開設届出書 | 開設から1ヶ月以内 |
| 税務署 | 源泉所得税の納期の特例の承認申請書 | 随時(届出月の翌月から適用) |
| 税務署 | 申告期限の延長届 | 事業年度終了日まで |
| 税務署 | 適格請求書発行事業者登録申請 | 課税事業者の場合、早めに |
| 都道府県・市区町村 | 法人設立届出書 | 各自治体の定める期限 |
| 都道府県 | 申告期限の延長届 | 各自治体の定める期限 |
| 年金事務所 | 健康保険・厚生年金 新規適用届 | 設立から5日以内 |
| 労働基準監督署・ハローワーク | 労働保険の成立届等 | 従業員を雇った日から10日以内 |
届出書類が多く感じるかもしれませんが、一つひとつは難しいものではありません。設立直後にまとめて提出すれば、その後の手続きがスムーズになります。
青色申告の承認申請は最優先
青色申告の承認を受けると、欠損金の繰越控除(10年間)に代表される、大きな税務メリットがあります。創業初期に赤字が出ても、翌期以降の黒字と相殺できるため、資金繰りの面でも大きな助けになります。絶対に期限を逃さないようにしましょう。
実務でよくある失敗
「登記が終わったらひと安心」と思って届出を後回しにし、気がつけば青色申告の期限を過ぎていた──というケースを何件も見てきました。3月決算の会社で6月設立の場合、事業年度終了日(3月末)までに申請書を出す必要があるため、実質的な期限は設立から10ヶ月弱。余裕があると思いきや、忙しさに追われて忘れてしまうことがあるのです。設立直後にまとめて対処するのが一番です。
なお、外資系企業の日本法人設立の場合は、登記時の必要書類や届出の英文対応など、独自の論点があります。当事務所では外資系企業のサポートも行っておりますので、該当される方はお気軽にご相談ください。
届出の全体像をさらに詳しく知りたい方は、「日本法人設立の届出一覧──届出先・期限・添付書類をまとめて整理」(近日公開予定)もあわせてご覧ください。
② 法人口座の開設とお金の流れの整理
届出と並行して、法人名義の銀行口座を開設しましょう。
「まだ売上が少ないから個人口座のままでいいか」と思われるかもしれませんが、個人と法人のお金が混ざると、記帳が非常に複雑になります。あとから仕分けし直す手間を考えると、最初から法人口座を使うのが圧倒的に効率的です。
創業期の経理で一番大切なこと──「お金の流れ」をきれいにする
創業期に最も意識していただきたいのは、「お金の流れをきれいにしておくこと」です。
口座の使い分けや入出金の管理が整っていれば、記帳自体は多少遅れても問題ありません。逆に、お金の流れがぐちゃぐちゃになっていると、あとから正確な帳簿を作ることが非常に困難になります。
具体的には、次のことを意識してみてください。
• 事業の入出金はすべて法人口座を通す──個人口座との混在を避ける
• 経費の支払い方法を統一する──法人クレジットカード、もしくは事業専用カードに集約する
• 立替払いのルールを決める──個人で立て替えた場合の精算方法と頻度を決めておく
実務でよくある失敗
「法人口座の開設に時間がかかったので、しばらく個人口座で売上を受け取っていた」というケースは非常に多いです。この場合、あとから法人の帳簿に「役員借入金」として記帳する必要があり、金額が大きくなると残高が合わなくなることもあります。口座開設は早めに動きましょう。
法人クレジットカードの導入もおすすめです。経費の支払いをカードに集約すると、利用明細がそのまま記帳の元データになり、管理が格段に楽になります。法人カードの審査に不安がある方は、まず事業経費専用の個人カードを1枚用意する方法でも構いません。法人カードの活用方法については、「法人クレジットカードを利用した決済について」もあわせてご覧ください。
③ 会計ソフトの選定と初期設定──創業期に合ったソフトの選び方
お金の流れが整ったら、次は会計ソフトの導入です。現在は、クラウド型の会計ソフトが主流になっています。銀行口座やクレジットカードとの自動連携ができるため、手入力の手間を大幅に減らすことができます。
主要クラウド会計ソフトの特徴
| ソフト名 | 特徴 | こんな方におすすめ |
| freee | 操作がシンプルで直感的。スマホアプリも充実 | 経理初心者。簿記の知識がなくても始めたい方 |
| Money Forward クラウド | 銀行口座やカードとの連携が強力。給与・請求書など他サービスとの連動も便利 | 複数の銀行口座やカードを使い分けている方 |
| 弥生会計オンライン | 歴史ある弥生会計のクラウド版。サポート体制が手厚い | 手厚いサポートがほしい方。税理士と連携したい方 |
どのソフトを選んでも、初期設定では次の作業が必要です。
1. 勘定科目の整理──自社の業種に合った科目体系に調整する
2. 銀行口座・クレジットカードの連携設定──自動取得の仕組みを最初に整える
3. 開始残高の入力──設立時の資本金や預金残高を正確に登録する
「自分でやるか、税理士に任せるか」の判断基準
迷われる方が多いのですが、判断のポイントは「日々の記帳に時間を割けるかどうか」です。本業に集中したい場合は、記帳代行も含めて税理士に依頼するのも一つの選択肢です。「全部任せる」か「全部自分でやる」の二択ではなく、「日々の入力は自分で、月次チェックと決算は税理士」という分担も現実的です。
実務でよくある失敗
「クラウド会計を導入して銀行口座を連携したから、もう経理は自動でできている」と思い込んでいる方がいらっしゃいます。しかし、自動連携はあくまで「取引データの取得」までです。取得したデータを正しい勘定科目に分類し、内容を確認する作業は人の判断が必要です。同期しただけでは決算にはなりません。
クラウド会計ソフトの詳細な比較は、「クラウド会計レビューシリーズ①〜④」をご覧ください。また、「クラウド会計は同期しただけでは決算になりません」もぜひお読みいただきたい記事です。
当事務所でもクラウド会計の導入支援を行っています。ソフト選びから初期設定まで、お気軽にご相談ください。
④ 月次の経理ルーティンを作る──「溜めない仕組み」が鍵
会計ソフトを導入したら、毎月の経理ルーティンを決めましょう。「溜めない」ことが何より大切です。
1年間まったく記帳せずに決算を迎えると、大量のレシートや通帳の取引を一気に処理することになります。何の支出だったか思い出せない、領収書が見つからない──。正確な決算ができなくなるだけでなく、税理士に依頼する場合の費用も跳ね上がります。
創業期の月次経理カレンダー
| タイミング | やること |
| 月初 | 前月の経費を記帳する。口座残高と帳簿を照合する |
| 請求書発行時 | 売上の請求書を発行し、控えを保管する |
| 入金確認時 | 売掛金の入金を確認し、消込を行う |
| 毎月10日 | 源泉所得税の納付(納期の特例の場合は年2回:7月・1月) |
| 随時 | 領収書・レシートの整理、スキャン保存(電子帳簿保存法対応) |
電子帳簿保存法への対応
証憑(レシートや領収書)の保管も重要です。電子帳簿保存法により、電子データで受け取った書類は電子データのまま保存することが義務づけられています。メールで受け取った請求書やPDFの領収書は、紙に印刷するのではなく、データのまま保存してください。
実務でよくある失敗
「1年間の記帳を決算直前にまとめてやろうとしたら、3ヶ月分のクレジットカード明細が見つからなかった」というケースがあります。カード会社のWebサイトでは過去の明細の閲覧期限が設けられていることが多く、時間が経つと確認できなくなります。月次で処理しておけば、こうしたトラブルは起きません。
⑤ 決算・税務申告のスケジュールを把握する
法人は、事業年度の終了後2ヶ月以内(申告期限の延長届を提出している場合は3ヶ月以内)に確定申告を行う必要があります。決算月から逆算して、いつ何をすべきかを事前に把握しておくことが大切です。
決算までのスケジュール
| 時期 | やること |
| 決算3ヶ月前 | 税理士への依頼がまだの方は、このタイミングで声をかけてください。直前だと対応が難しくなることがあります |
| 決算1ヶ月前 | 決算に向けた資料の整理。未処理の経費がないか確認。棚卸資産がある場合は準備を始める |
| 決算月 | 棚卸し、減価償却費の計算、経過勘定の処理 |
| 決算後2〜3ヶ月以内 | 法人税・消費税・地方税の確定申告と納付 |
第1期決算で忘れがちな「創業費」と「開業費」
会社設立前にかかった費用(定款認証手数料、登録免許税、印鑑作成費、設立前の調査費用など)は「創業費」として繰延資産に計上できます。また、設立後から営業開始までにかかった費用は「開業費」として同様に処理します。いずれも任意のタイミングで償却でき、利益が出た年にまとめて経費にすることも可能です。領収書は設立前のものも含めて必ず保管しておきましょう。
実務でよくある失敗
「決算が終わったから、もう税金のことは来年まで考えなくていい」と思っていたら、予定納税や中間申告の通知が届いて驚いた──というケースもあります。法人の場合も、前期の法人税額が一定以上であれば中間申告が必要になります。決算後の資金繰りもあわせて計画しておきましょう。
なお、青色申告の承認申請書だけは、税理士に依頼する・しないにかかわらず、必ず期限内に税務署へ提出しておいてください。これだけは後からでは対応できません。
決算後にやるべきことは、「確定申告が終わったら確認すべき5つのこと──来期に向けた節税準備」(近日公開予定)で詳しく解説しています。
まとめ──創業1年目の経理は「仕組みづくり」がすべて
創業1年目にやるべき経理の段取りを、5つのステップで整理しました。
- 設立直後に届出を済ませる(特に青色申告の承認申請は最優先)
- 法人口座を開設し、お金の流れを整理する(個人と法人の分離が鍵)
- 会計ソフトを選定し、初期設定を完了する(連携設定まで済ませる)
- 月次の経理ルーティンを確立する(「溜めない仕組み」を作る)
- 決算・税務申告のスケジュールを把握する(創業費の計上を忘れずに)
最初にきちんとした仕組みを作っておけば、2年目以降はルーティンに乗せるだけです。「何から手をつけていいかわからない」という方も、一つずつ順番に進めれば大丈夫です。
創業期の経理体制の構築をお手伝いしています。
届出のチェックリスト作成から、クラウド会計の導入支援、月次の記帳代行まで対応可能です。
「まず何をすればいいか相談したい」という段階でも構いません。






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